美容業界で働く人に向けたキャリアライターの宮崎彩香です。
専門学校を出てから6年間、大手エステサロンでエステティシャンとして働いていました。
今はフリーランスのライターとして、美容業界の転職やキャリアに関する記事を書いています。
エステティシャン時代、同期は15人いました。
3年後に残っていたのは5人。
6年後、私が辞める頃には2人だけでした。
美容専門学校時代は、全員がキラキラした目で「お客さまをきれいにしたい」と話していたのに、あっという間に人が減っていきました。
辞めていった同期の多くは、美容が嫌いになったわけではありません。
「お客さまに喜んでもらえる仕事は好き。でも、この給料じゃ生活が厳しい」「休みが少なくて体が限界」。
そんな理由がほとんどでした。
この記事では、美容・エステ業界の労働条件の実態を数字で整理しながら、サロン選びのときに確認すべきポイントをまとめました。
これから美容業界を目指す方にも、転職を考えている方にも、参考にしてもらえたらうれしいです。
Contents
美容・エステ業界の離職率はなぜ高いのか
数字で見る離職の現実
美容業界の離職率は、他業界と比べて高い水準にあります。
厚生労働省が公表している令和6年雇用動向調査によると、「生活関連サービス業・娯楽業」の離職率は他の業種を上回っています。
令和5年の一般労働者に限ったデータでは離職率20.8%で、全産業平均の15.4%より5ポイント以上高い数字です。
さらに、ホットペッパービューティーアカデミーの調査では、美容師の3年以内の離職率が約58%にのぼるという結果が出ています。
全職種平均の約32%と比べると、かなりの差です。
エステティシャンについても同様の傾向があり、業界全体として「定着率が高い」とは言いにくい状況が続いています。
| 指標 | 美容・サービス業 | 全産業平均 |
|---|---|---|
| 年間離職率(令和5年) | 20.8% | 15.4% |
| 3年以内離職率(美容師) | 約58% | 約32% |
辞める理由は「嫌い」じゃない
ここで注目したいのは、辞める理由が「仕事が嫌だから」ではないことです。
ホットペッパービューティーアカデミーの新人定着・離職の実態調査によると、入社1年未満で辞める人の主な理由は「人間関係や指導への戸惑い」でした。
一方、1年以上勤務してから辞める人は、「給与や休みなどの生活基盤」を理由に挙げる割合が高くなります。
最初のハードルは「職場に馴染めるか」。
それを越えた先に、「この条件で本当に働き続けられるか」という壁が待っている。
同調査の研究員も、「新人に必要なのは安心できる対話、育ったスタッフに必要なのは生活の安定」と述べています。
厚生労働省の雇用動向調査でも、転職した人が前の職場を辞めた理由の上位には「労働条件(賃金以外)」と「賃金」が入っています。
20代では労働条件への不満が最も多く、30代以降は人間関係が上位に来る傾向があります。
| 年代 | 離職理由の1位 | 2位 |
|---|---|---|
| 20代 | 労働条件(賃金以外) | 賃金 |
| 30代 | 人間関係 | 賃金 |
| 40代 | 人間関係 | 労働条件 |
美容業界に限った話ではありませんが、サービス業全般でこの傾向が強く出ています。
私自身の経験を振り返っても、まさにこの通りでした。
1年目は先輩との関係に悩んで辞めていく子が多くて、3年目以降は「この仕事は好きだけど、もっと稼げる仕事に移りたい」と言って去っていく子が増えました。
「好き」と「続けられる」は、残念ながら別の話なんです。
エステティシャンの年収と待遇の実情
「好きだから頑張れる」という気持ちは大切です。
でも、生活が成り立たなければ続きません。
具体的な数字を見てみましょう。
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、エステティシャンの平均年収は約354万円です。
平均年齢37.9歳、月間の平均労働時間168時間というデータが出ています。
全給与所得者の平均年収が458万円ですから、その差は約100万円。
決して小さい差ではありません。
初任給は専門学校卒で21〜22万円、高卒の場合は18万円台が相場です。
年収のボリュームゾーンは300万〜400万円台で、美容師の平均年収(約330万円)とほぼ同じ水準になっています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| エステティシャン平均年収 | 約354万円 |
| 全給与所得者平均年収 | 458万円 |
| 初任給(専門卒) | 21〜22万円 |
| 月間平均労働時間 | 168時間 |
ただし、これは全国平均の話です。
大手サロンと個人サロンでは給与体系がかなり異なります。
大手サロンは固定給制のところが多く、福利厚生や研修制度が整っている反面、基本給自体はそこまで高くないケースもあります。
一方、個人サロンや歩合制を導入しているサロンでは、指名数や売上実績によって月収に幅が出ます。
中には月収40万円以上を稼ぐエステティシャンもいますが、安定性という面ではリスクもあります。
「平均値がこうだから」と一括りにするのではなく、応募先の具体的な給与体系を確認することが大切です。
固定給なのか歩合なのか、昇給の仕組みはどうなっているか。
この点は面接で遠慮なく聞いてしまって問題ありません。
サロン選びで確認したい労働条件
サロンを選ぶとき、「雰囲気が良さそう」「技術が学べそう」という印象だけで決めてしまう人は少なくありません。
実際、私もそうでした。
就活のときは「このサロン、なんかおしゃれだし楽しそう」くらいの感覚で選んだ記憶があります。
もちろん雰囲気や技術力も大事です。
でも、数年後も同じ気持ちで働けるかどうかを左右するのは、結局のところ労働条件です。
もう一度就活をやり直せるなら、私は間違いなくこの部分をもっとちゃんと調べます。
キャリア相談を受ける中で、よく話題になるポイントをまとめました。
給与体系と手取り額
求人票の「月給○○万円」だけ見て安心するのは早いです。
みなし残業代(固定残業代)が含まれているケースは多く、基本給が想像より低かったということもあります。
面接の場で「基本給はいくらですか」「みなし残業は何時間分ですか」と質問して問題ありません。
この質問を嫌がるサロンは、そもそもその時点で心配です。
勤務時間と年間休日数
エステサロンの営業時間は長く、シフト制が基本になります。
朝10時から夜21時まで営業しているサロンも珍しくありません。
年間休日数は105日前後が多いですが、中には100日を切るところもあります。
「週2日きちんと休めるか」「連休は取れるのか」を事前に確認しておくと、入社後のギャップを減らせます。
最近では週休3日制を導入するサロンも出てきているので、働き方の選択肢は以前より広がりつつあります。
社会保険と福利厚生
大手サロンならほぼ問題ありませんが、個人サロンや小規模チェーンでは社会保険が完備されていない場合もあります。
健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の4つがそろっているかは最低限チェックしてください。
将来のことを考えると、ここを妥協するのはおすすめしません。
研修制度とキャリアパス
入社後の研修体制は、長く続けるうえで大きな差になります。
段階的にスキルアップできる仕組みがあるかどうか、資格取得の支援はあるか、店長やマネージャーへのキャリアパスが見えるかどうか。
こうした点は会社説明会やサロン見学の場で具体的に質問してみると、返ってくる答えの濃さで温度感がわかります。
「研修期間はどのくらいですか」「独り立ちまでの目安は何ヶ月ですか」といった具体的な質問をすると、体制が整っているサロンほど詳しく答えてくれます。
産休育休と時短勤務
美容業界は女性の比率が高い業界です。
産休育休の制度はあっても、実際に取得した実績があるかどうかは別の話です。
「制度があります」と「昨年も○名が取得しました」では、安心感がまったく違います。
たとえば、株式会社不二ビューティ(たかの友梨ビューティクリニック)は、社員の95%以上が女性で、管理職の女性比率も9割を超えています。
産休育休の取得率はほぼ100%、小学校入学まで時短勤務も可能という制度を整えています。
大手サロンの中には、こうした取り組みを公表しているところがあるので、比較の参考にしてみてください。
| チェック項目 | 確認すべきこと |
|---|---|
| 給与体系 | みなし残業の有無、基本給の内訳 |
| 勤務時間 | シフトパターン、実際の残業時間 |
| 年間休日 | 日数と連休の可否 |
| 社会保険 | 4つの保険の完備状況 |
| 研修制度 | 段階的な育成プログラムの有無 |
| 産休育休 | 制度の有無に加え、取得実績 |
口コミサイトで社員の声を調べてみる
労働条件を調べる方法として、もうひとつおすすめしたいのが企業口コミサイトの活用です。
OpenWorkや転職会議など、その会社で実際に働いていた人(または現職の人)が、給与・残業・社風について本音で書いているサービスがあります。
私も転職を考えていた時期にかなり活用しました。
求人情報は、どうしても「良い面」が前に出ます。
それは当然のことで、求人は人を集めるために出すものだからです。
一方、口コミサイトには残業時間の実態、有給の取りやすさ、人間関係の雰囲気など、求人票だけでは見えにくい情報が載っています。
たとえばたかの友梨の社員が投稿した口コミページでは、月間の残業時間や有給消化率、女性の働きやすさに関する評価など、社員ならではの具体的な声が掲載されています。
OpenWork上では株式会社不二ビューティ(たかの友梨ビューティクリニック運営)の口コミが800件以上あり、女性の働きやすさに関する口コミだけでも120件を超えています。
これだけの件数があると、1人の意見に偏ることなく全体の傾向を読み取りやすくなります。
口コミサイトは、転職先を検討するときだけでなく、新卒で就職先を選ぶ段階でも参考になります。
先輩社員がどんなことにやりがいを感じていて、どんなことに不満を持っているのか。
その温度感は求人票では見えないものです。
口コミを読むときに意識しておくといいのは、以下の3点です。
- 1件の口コミだけで判断せず、複数読んで全体の傾向を見る
- 投稿時期を必ず確認する(数年前の口コミは今の職場環境と異なる場合がある)
- 極端にポジティブ、または極端にネガティブな投稿は割り引いて受け止める
どんな会社にも良い面と課題はあります。
自分が「ここだけは譲れない」と思う条件を決めておいて、それに照らし合わせて判断するのが、結局いちばん後悔しない選び方です。
余裕があれば、口コミサイトの情報に加えて、日本エステティック協会のような業界団体のサイトも覗いてみてください。
エステティシャンの資格制度やキャリアに関する情報が整理されていて、業界の全体像を把握するのに役立ちます。
まとめ
美容やエステの仕事は、お客さまの笑顔を間近で見られるやりがいのある仕事です。
でも「好きだから頑張れる」だけでは、3年、5年と続けていくのは正直なところ厳しい。
私自身、同期がどんどん辞めていくのを見ながら、そのことを痛感しました。
給与、休日、研修制度、福利厚生。
こうした労働条件は地味に見えるかもしれませんが、長く働き続けるための土台そのものです。
土台がぐらぐらのまま「好き」だけで踏ん張り続けるのは、いつか限界が来ます。
サロン選びのときは、求人票の情報だけで満足せず、口コミサイトやサロン見学も活用して、できるだけ多角的に情報を集めてみてください。
実際に働いている人の声に触れるだけでも、見え方がずいぶん変わります。
「好き」を長く仕事にできる環境は、待っていても降ってきません。
自分の目で確かめて、自分で選ぶもの。
私はそう思っています。
最終更新日 2026年7月24日 by weetso









